ブログ - Words from Flying Books
ニューヨークと東京を拠点に活躍する新進気鋭のアーティスト、大河原 愛「網膜の記憶」展が9月21日(月)から始まりました。
古文書にドローイングをした「網膜の記憶」をはじめ、古文書や蝶を用いたコラージュ作品「Enigma」シリーズ他、最新のドローイング作品も含め、7点を展示しています。
大河原 愛さんの作品は、まずその美しさに引き込まれますが、見ているうちに自分自身への問いかけとなり、目を離せなくなります。
「古文書の紙の美しさに惹かれた」と大河原 愛さんは語っていましたが、それは自分の計り知れないはるか昔の時代のもの。
色褪せて行く過去の記憶とその喪失感、自分という存在の不確かさ、そういった不安なものを見つめることで、人間の苦悩と精神の解放の両面性が描かれています。
そうした大河原 愛さんの表現世界と古い紙の物語が相まって、今いる場所から解き放たれ、記憶を辿る旅へと誘われます。
「網膜の記憶」展は10日3日(土)まで。
美しいコラージュとドローイングの作品をぜひこの機会にご覧ください。
*展示作品はすべて販売しています。作品の価格、購入方法は電話またメールにてお問い合わせ下さい。
大河原 愛 HP
22日まで名古屋の松坂屋本店でも個展を開催中です。
「―無形の痕跡― 大河原 愛 作品展」
9月16日(水)〜22日(火・祝)
松坂屋本店 南館6F 美術売り場
Uehara
名古屋のカッコいいセレクトブックショップ【YEBISU ART LABO】の岩上さん・黒田くんは、ボケ・ツッコミが絶妙な(ときどきボケ×ボケだったりする)ほんわかコンビ。ほんわかしていても、実はこの二人、名古屋の書店と街をつなぐ大規模な本のイベント「BOOKMARK NAGOYA」の実行委員長でもあります。
その超多忙な二人が、出版レーベル<ELVIS PRESS>を立ち上げ、選りすぐりの新しいアーティストたちのZINEや写真集を満を持して出版することになりました。先の「ZINE’S MATE」でも<ELVIS PRESS>のZINEは大好評で、このたびフライング・ブックスでも扱うことになりました。
新刊・古書問わず、今までたくさんの本を扱ってきた二人だからこそ、先鋭的なセンスを持ちながらも流行に流されない才能を見出したのでしょう。
『STOMACHACHE./STOMACHACHE.』 ¥840
『水面森 - minamori - / 伊藤よう子』 ¥840
『DAWN/Yoh Nagao』 ¥945
『DAWN2/Yoh Nagao』 ¥1575
『White Book/ Masahiko Tokita』 ¥1050
※画像は真っ白ですが、撮影ミスではありません。
白い紙に白いインクで印刷してあるのです。
写真集『Goodbye,Blue Monday』Yutaka Kobyashi ¥1470
どれも他では見られないような個性的な作品なのですが、なかでも、私のお気に入りは、『STOMACHACHE.』。今年の春、YEBISU ART LABOのギャラリーで『STOMACHACHE.』の展示を見ることができ、その一見かわいいのになんかちょっと変わっている絵に一目ぼれしてしまいました。
頼りなさげなフラットな線画、だけど、ジャケットの格子模様は几帳面に描いていたり、何か小さくも強いこだわりを感じます。まだ若い作家で、アメリカのスケーターカルチャーにも影響を受けているそうです。布にシルクスクリーンで刷った「STOMACHACHE.」のタグ入り(色違い)。見開きページの色紙も色違いで作るなど、遊び心をくすぐるZINEです。
80年代後半、西海岸のスケーターたちが、写真やイラスト・詩など自分の表現したいことをまとめて、ローカルに流通させていったときのザラザラしたストリートの空気感とは違い、日本のZINEは、もっとクラフト的なこだわりや、表現内容も個人の内側に入り込んでいく印象があります。
ZINEは、個人が表現したいものを作り、コピーしてホッチキスで留めただけの原始的な形が多いですが、手作りで100部くらいしか作らないので、メディアというにはあまりにも規模が小さいものです。同人誌的なものって、独りよがりで、自己完結してしまいがちだし、ZINEの多くはメッセージ性などなく、とりとめのない落書きのようなものと見られがち。
でも、商業的な雑誌やフリーペーパーが溢れている今、そこでしか見られない個人的なわけのわからないエネルギーに惹かれてしまいます。とても個人的なところから発しているのに、その空気を共有したいと思ったり、その作家の好きなものに共感できるのは、なんだか不思議で面白いことですね。
その時の空気が込められたものは、表現がリアルなまま伝わってくるから、ブログやSNSとは違って、手に取ったときに紙やインクの質感やにおいを感じたり、小さなところから手渡しで広まっていく流通の仕方など、顔の見える生のコミュニケーションってやっぱり面白い!
店頭でサンプルも置いていますので、ぜひ手にとってご覧ください!
ELVIS PRESS by YEBISU ART LABO FOR BOOKS
http://www.elvispress.jp/
*スイスのNivesやスウェーデンのFAREWELLなども有名。
http://www.nieves.ch/
http://www.farewellbooks.com/
Uehara
普段、モデルの可能性を最大限に引き出すことを生業とするファッション・フォトグラファーが、初めて曝け出した自らの内面性とは?
東京とニューヨーク。ファッションや舞台の最前線で活躍するたかはしさんの作品は、舞台やコンタクトレンズ、ファッションブランドなどの広告写真など、街中や電車内で普段から何気なく、そして誰もが一度ならず目にしていますが、今回は一転して、長年住み親しんだ街をモノクロームの世界に封じ込めたライフーク的シリーズをご紹介します。
朽ちかけた廃墟の暗澹とした闇に浮かび上がる、屑鉄、レンガや廃材。なぜか目を奪われてしまうのは、「肌の質感」を大切にしているファッション・フォトグラファーでもあるたかはしさんならではの魔法かもしれません。
何者かが残したグラフィティとすら言えないような落書きや、墓地や、対岸の廃墟越しに眺める蜃気楼のような淡い乳白色の摩天楼は、裸一貫でニューヨークに渡ったアウトサイダーだからこそ持てる、都市への慈愛に満ちたやさしい視線とも言えるでしょう。
たかはしさんのホームページで観られる、ロバート・デ・ニーロやジェニファー・ロペスといった華やかなセレブリティのポートレートとぜひ対比して観てみてください。たかはしじゅんいちという写真家の人物像がより浮き出てくることと思います。
2009年9月 Flying Books 山路和広
2009/9/7-9/20 Flying Books Wall Gallery 「Afterimage—New York」展byたかはしじゅんいち出展作品
ゼラチンシルバープリント 各Edition30・サイン入 16×20inch
*作品の価格、購入方法は電話またメールにてお問い合わせ下さい。
たかはし じゅんいち Junichi Takahashi
新潟県新潟市出身。写真家・立木義浩に師事。1988年、フリーランスの写真家として独立、翌年よりNew Yorkに拠点を置く。2004年からは東京にも拠点を置き、国内活動を積極的に展開。以来NY&東京の2重(住?)生活をしている。今年は活動20周年、来年は渡米20周年を迎える。
ポートレイトを中心に、広告、音楽、ビューティー、雑誌等において幅広く活動。1995年からは世界的エンターテインメント集団「STOMP」のオフィシャルフォトグラファーを務め、Jennifer Lopez、Maxwell、Baby Face、Marc Anthonyなどミュージシャン達のCDジャケットや雑誌掲載写真を撮り下ろす。2002年2月には、坂本龍一氏によるプロジェクト「Elephantism」撮影のためにケニアへ。最近では、宮本亜門氏演出の舞台「トゥーランドット」のポスタービジュアルほか、Johnson& Johnson「ワンデーアキュビュー」等の広告写真を手がける。
1995年からのライフワークとして、NYの伝説的ホテルChelsea hotelの住人達をはじめ、アーティスト・ポートレートの撮影は現在も続行中。撮影旅行は、ペルー、ネパール、南アフリカ、アイルランド、ケニヤ、英国、トルコ、ギリシャ、 etc. “日本在住写真家”として、“NY在住フォトグラファー”として、国境を越えた活動を展開、常に世界を移動し続けている。
オフィシャルホームページ www.junichitakahashi.com
ファッション誌の代名詞ともいえるヴォーグに1931年から70年代までもの長きにわたって質の高いファッション・フォトを発表してきたホルスト(HORST P. Horst)。
カール・ラガーフェルドやカルヴァン・クラインなどのスター・デザイナー、ブルース・ウェーバー、ハーブ・リッツ、デュアン・マイケルズらの著名な写真家もホルストのオリジナル・プリントのコレクターなのだと云う。
1992年出版の彼の写真集『FORM』には1935年から1990年までに撮影された作品が―年代順にではなく―収録されている。
ヴォーグではカラー写真も多く見られるが、ここではモノクロ作品のみで、頁をめくるとギリシャ彫刻、ファッション写真、メール・ヌード、植物、オブジェ、フィメール・ヌード(一見わかりにくいが風景写真も)が、かわるがわる現れてくる。
しかしモチーフの違いは決して散漫な印象を与えることはない。
ヴォーグの仕事でも、綿密な計算のもとに完璧なセットを組んでのスタジオ撮影を好んだと云うホルストの美学に、これらの異質なモチーフの作品群が貫かれているからであろう。
グロピウスの芸術学校で建築を学び、ル・コルビュジェを慕ってパリに来たと云う経歴もうなずけるように、彼の作品は照明の遣い方などが立体的で、平面だけでなく量感も意識して構成され、ドラマティックな独特の空間をつくりあげている。
流行の衣服を纏ったモデルもギリシャの神々も多肉植物も、このホルストの空間の中では何の区別もなく、日常とは異なる輝きを帯びる。
有名な「マンボシェのコルセット」は言うに及ばず、肖像写真を撮るかのように念入りに照明をあてられた足や手などの人体のパーツ、オウム貝、棕櫚の葉のしずくはフェティッシュな香さえ漂わせる。
巻末にはホルストを写真家、そしてヴォーグへと導いた、自身もヴォーグ及びハーパース・バザーで活躍したジョージ・ホイニンゲン=ヒューンによる1931年、20代半ばのホルストをモデルとした一枚が添えられている。
『FORM』 HORST 1992 Twin Palms Publishers 21000円
Tanaka
みなさん、昔話といったら「桃太郎」や「浦島太郎」などは子どもの頃からなじみがあると思いますが、「かちかち山」のお話は、ご存知でしょうか?
たしかタヌキとウサギが出てくる話でなんか火がついてしまって大変でしたよね。
でも、なんで火がついたんだっけ……?
昔話なんて子どもの話だと思ってナメてたらいけません。
今日紹介する本に出てくるタヌキは、女好きなダメ男。一方、ウサギはひどい悪女。
副題は「堅々獄夫婦庭訓(かちかちやまめうとのすじみち)」となっております。
絵は横尾忠則、文は高橋睦郎。
昔話を最高にカッコよく、面白くリミックスしたような感じです。
横尾の絵は、ポップでサイケデリック、ビートルズのメンバーの顔や、ブリジット・バルドー似の美女がサンプリングされて登場します。
そして、血なまぐさい、欲にまみれた大人のおどろおどろしい物語。
極めつけは、シニカルな「めでたし、めでたし」。
見開きの大きなページ構成で、呼応する絵と言葉。
昔話って、すでに知っているようで、大人になって読んでみたら実は怖い話だったり、言葉の裏の物語を読み取ってしまったりします。
これは、そういうことを絵とあいまってとても楽しくやってのけた作品です。
また、宇野亜喜良の「浦島太郎」では、余白によって言葉の世界が詩情たっぷりに引き立てられていて美しいし、田中一光+坂上弘の「花咲爺」では、途中に裏話が挿入され、本文とミックスされながら読み進めるのが面白いです。
豪華なデザイナー・作家陣によってとても丁寧に作られた、大人のための昔話絵本。
一筋縄ではいかない、だからこそ、何度も開きたくなります。
『日本民話グラフィック』
灘本唯人・永井一正・宇野亜喜良・田中一光・横尾忠則
「一寸法師」「桃太郎」「浦島太郎」「花咲爺」「かちかち山」の5編を収録。
初版 函ヤケ 扉・奥付少シミ 美術出版社 昭39 ¥58,000
そして、もう一点、ちょっと変わった昔話アイテム。
『養老の滝』のレコード付き絵本です。
伊坂芳太良のイラストが全面を飾る美しいカラーヴァイナル。
中村メイコの楽しい語り。
レコードを聴きながら、絵本を見ると、目と耳から立体的に物語が楽しめます。
こちらは、先ほどのとは違って、良い子のための日本名作童話シリーズ。
とても親孝行な息子のお話です。
病に伏している父親のために町へ出て、たきぎを売り、父親の好きな酒を買って帰る日々。
ところが、ある日息子は、山道で足をすべらせて崖から落ちてしまいます。
気がつくとそこには、酒の流れる滝が……。
そうして、これからは父の好きな酒をいくらでも汲むことができるようになって、二人は幸せに暮らすのでした。
この親孝行息子、良い子すぎてなんだかムズムズするなぁと思ったら、伊坂芳太良のあとがき(雑感)を読んで、溜飲が下がりました。
「山の中に、おいしいお酒があることも、大きな夢があることもぼくは信じている。親孝行の話だけでは今の子どもはついて来ないのではなかろうか。」
伊坂好きな方には、レアアイテムとしてジャケ買い必至です。
レコードを飾るも良し、聴くもよし、リミックスするも良し! おすすめです!
『養老の滝』
日本名作童話シリーズ
伊坂芳太郎
マーラックス・レコード 1968年(少水シミ) 14,800円
Uehara
ご好評をいただいた西村多美子さんの『しきしま』展、
8/24月曜から人物が被写体となった作品を中心としたpart2が始まります。
是非この機会にご覧下さい!
part 1の作品のオーダーもまだ受け付けております。
作品の価格、購入方法は電話またメールにてお問い合わせ下さい。
なにかを集めたことはありますか?
稀覯本やめずらしい切手でなくても、小石や貝殻、壜のふた、シールなどの小さなものをついつい集めてしまったことは?
スペインの14歳、ホアキン・ゴメス君は、飛行船やはにかむ少女、エキゾチックな風景の魅惑的なポストカード、ラベル、ポスターを集め始めました。1916年の事です。
どんな図柄だったのかは分かりません、しかし最初のある一枚が彼を10数万枚もの紙たちとの出会いへと連れ出したのです。
長じてホアン・ミロらと芸術運動を興し、写真家ともなったゴメス少年、いえゴメス氏のヨーロッパ最大といわれるコレクションから、テーマ毎に一冊ずつまとめた、この『100年前のヨーロッパ』シリーズは日本オリジナルで1985年に出版されました。
19世紀末から20世紀はじめのベル・エポックの時代。写真、映画、航空、鉄道、印刷、あらゆる分野において新技術がつぎつぎ実用化され、文化華やかなりしこの頃数多く作られては消えて行った紙モノたち。
写真に淡く彩色された、夢見るような美女たちのポストカード。
憧れの乗り物、自動車や飛行機、気球に飛行船はユーモラスなコラージュやイラストでも描かれています。
コマーシャルアートの先駆けでもあるハバナ煙草のパッケージ。
そして「クロモス」。
この時代と共にブームを起こした後、瞬く間に消え去ってしまったという愛らしい、趣味の印刷物。多色刷石版で花飾りや天使を象り、型抜きされてレリーフのようなふくらみをもった、掌にのるほどのクロモスは、実用性より集める事を目的とされていました。
収録されたこれら一枚一枚は、見る人を多面体の結晶のような光を放つベル・エポックの一端に触れさせ、ささやかなものを集めることの魅力へと誘うのです。
ゴメス・コレクション 100年前のヨーロッパ
第1巻 1900年の女神たち
第2巻 クロモスの世界
第3巻 機会と科学の夢
第4巻 ハバナ・エキゾチカ
1985,86年 小学館刊 各ビ二ールカバー付 4冊セット 8,000円(ご注文は店頭かメールにて)
Tanaka
サイレント映画のような「タルサ」から「ティーネージ・ラスト」、そして服役を経て、1993年にスイスの出版社からドイツ語版「DIE PERFEKTE KINDHEIT」、1995年英語版「THE PERFECT CHILD HOOD」として出版された写真集。
ピストル自殺を演じる少年、リヴァー・フェニックスのピンナップ、何度も繰り返される露骨な性器剥き出しの写真達。厳粛な雰囲気の「タルサ」とは違いカラー写真を多用し、書きなぐりのメモや、新聞の切れ端、ブラウン管のザラついた少年のポートレートが続く。
五十歳を過ぎてスケボーを始め、若い連中と付き合い、怪我をすることも厭わない、飽くなきティーンへの追求。フランスが生んだ怪物作家ジャン・ジュネの殺人者ヴァイドマンへの憧憬の眼差しを思い出した。
ストレートな写真とセットアップの写真の中で揺れ動く少年達。この写真集が後の世界中のティーネージャーが永遠に見続けるであろう映画「KIDS」へと昇華するのである。高級な服や、食事に目を毒された人はすぐに見るべし。
[独]Die perfekte Kindheit ラリー・クラーク(Larry Clark) 1993 HC・カバー ¥38,000
[米]The Perfect Childhood ラリー・クラーク(Larry Clark)1995 HC・カバー ¥38,000
林 裕司
いよいよ、明日から「第18回東急東横店 渋谷大古本市」が始まります。
毎年、30店以上の古書店が参加し、文学・歴史・美術・漫画など、書店自慢の逸品が一堂に会します。
「古書サンエー」では、美術書をはじめ、映画・音楽・ヴィジュアルブック・歴史・戦記・航空関連など、普段店頭に並べていない商品も多数出しています。つい先ほど陳列し終えたとこです!
急な夕立でも駅に直結してるから問題なし!ぜひ、この機会にお立ち寄りください!
8月14日(金)〜19日(水)[最終日は17時閉場]
東急東横店 西館8階 催物場
http://www.tokyu-dept.co.jp/toyoko/event/event.html#6372
Uehara