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ブログ - Words from Flying Books

ヴェルレーヌの詩に乗せて

秋風の ヴィオロンの 節がなき啜り泣き もの憂きかなしみに わがこころ傷つくる。 時の鐘鳴りも出づれば、 せつなくも胸せまり、 思いぞ出づる来し方に涙は湧く。 落葉ならぬ身をばやるわれも、 かなたこなた吹きまくれ 逆風よ
(ヴェルレーヌ「秋の歌」 堀口大學訳)

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この胸に迫るヴェルレーヌの詩を、ぼくはブラッサイが撮った夜のパリの写真を見ると思い出す。19世紀後半から20世紀前半のパリに憧れるロマンチストな人にぜひ見て欲しい写真だ。天才詩人ランボーとヴェルレーヌがパリの街を練り歩き、カフェでアブサン酒を飲んで大立ち回りを演じ男色に耽り詩を書く。そんな19世紀の面影を残したパリの街頭やカフェの写真は、生まれた時から電気の洗礼を受け続けている我々に、ロウソクのやさしい光を見ている気持ちにさせてくれる。パリが世界の文化の中心だった時代の光の記録である。ブラッサイは、ヘンリー・ミラー等とつるんで夜のパリの街を徘徊し、有名人や娼婦、そして恋人達を撮り続けた。ミラーの『北回帰線』を読んだことがある人なら、小説の雰囲気をよりリアルにブラッサイの写真から感じられるに違いない。華やなパリには数えきれない程の有名人達が時を同じくして活動し、才能をぶつけ合ってそして生きた。ホモ・ルーデンス達のカフェでの立ち振る舞いや会話をハイビジョンの映像でモニター出来ればさぞかし楽しいに決まってる。もしボヘミアンな生活を20世紀前半のパリで体験出来るなら、僕はマジで死んでもイイゼ!

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しかし現在、タイムマシーンが映画や小説の中でしか出てきていない事実をしっかりと心に受け止めて、ブラッサイの写真や、エコール・ド・パリにオマージュを捧げた作品などで僕は我慢する。特にジャック・ベッケルの『モンパルナスの灯』を何度も何度も繰り返し見る事にしよう。ちなみにこの映画のモディリアーニ像は最高だ!ブラッサイの写真は賑やかなカフェの写真とは裏腹に、孤独なヨーロッパの舗装された石畳が特に印象的だ。暖かいカフェを一歩出れば嫌がおうでも認識させられる圧倒的な存在感を示すこの石の固まりに、もう一つのパリの顔が見える。裏のパリの顔は、泥棒で小説家の男、フランスが生んだ世界をひっくり返した墜天使、聖ジュネの小説の世界に美しい物語として読む事が出来る。
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パリからニューヨークに時代がシフトして、そして現在はTOKYOが世界の中心になるべきだと僕は妄信し続けているが、今だ答えは未知数だ。世界中の野心溢れた一攫千金を目指す男女はTOKYOでしなやかにその美しい細胞を燃焼させろ。

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BRASSAI
PARIS DE NUIT
初版 AMG 1987
¥14,700

林 裕司

2010 年 3 月 17 日 | comment
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【満員御礼】4/4小林大吾リリパ決定! 2010年のイベント第一弾

Flying Books、2010年初のイベントのお知らせです!
まずは4月4日(日)に小林大吾君の新作CDリリースライブ、
4月25日(日)に長沢哲夫さんの新作詩集出版記念ポエトリー・リーディングを行います。

今年は音楽レーベル部門FLY N’ SPIN RECORDSのリリースも目白押しとなる予定ですし、
SPLASH WORDSからもトカラ列島諏訪瀬島の詩人、長沢哲夫さんの集大成となる選詩集を刊行します。
また、国内外で買い付けた本も随時店頭に出しておりますので、是非見にいらしてください!
(K.Yamaji)

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4月4日(日)
FLY N’SPIN RECORDS presents
小林大吾3rdアルバム 『オーディオビジュアル』 先行リリース・ライブ
【ライブ、ポエトリー・リーディング】
出演:小林大吾 追加決定トークゲスト:古川耕
OPEN:18:00 start:18:30 
料金:3800円(特装版CD付)
予約前売制 限定40名様 
予約受付終了いたしました。完売御礼申し上げます。
(キャンセル待ちのお客様には、有無がわかり次第随時ご連絡差し上げます。最終のご連絡は3/29を予定してます。もう少々お待ち下さい。)
ご好評につき、期日等詳細は未定ですが、第二弾も企画したいと思います。
詳細が決まり次第、こちらのブログにて発表させていただきます。

<チケット販売方法(限定予約40名) >
前売券は3月27日までにFlying Books店頭もしくは郵便振替でのご精算となります。
(お振込みの場合の振込先:郵便振替 00130-1-400025  (株)古書サンエー)
ご予約の際に予約番号を発行させていただきます。
ご入金確認後、チケットを店頭もしくは郵送にてお渡しさせていただきます。

ご予約の方は当日17:50前にお並び下さい。予約番号の順にご入場いただきます。
18:00以降にお越しの方は、予約番号順の方のご入場が済み次第、先着順での入場となります。なお、会場の都合上、お席を約25名様とさせて頂き、それ以降の方はお立ち見となります。ご了承下さい。

*『オーディオビジュアル』は通常版(5/12発売、定価1995円)と
通販、Flying Books店頭のみで先行発売の特装版(通常版CD、取扱説明書、mixCD、アートワーク数点、限定500シリアルNo入、定価3000円)の二種類があります。

<『オーディオビジュアル』特装版のご予約について>
3/22(月)よりメールでのみ受付させていただきます。
(4月中旬〜下旬のFlying Books店頭発売および通販発送を予定しております。*近日詳細発表予定)

下記の項目を明記の上、メールにてご注文ください。
・お名前、電話番号、メールアドレス
・お届け先の郵便番号、住所
・ご希望のタイトル、数量
・受け渡し希望 Flying Books店頭 もしくは 代引き発送

ご注文先メールアドレス : records[a]flying-books.com
スパム防止のため@を[a]に変えてあります。

+++++ お支払い方法 +++++
郵便の代金引換発送になります。商品がお手元に届いた際に
「商品代金(3000円)×注文枚数+代引手数料&送料(何枚でも500円)」をお支払い下さい。
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J-WAVE TOKIO HOT100に2週ランクインするなど、現在もロングセラー中の『詩人の刻印』発売から2年半。
満を持して贈る3rdアルバムは「立ちすくむ背中をちょんと押す」コンセプト・アルバム風。
音・アートワーク・詩、すべてがホームメイドの芸術品!
通常版のリリースから一ヶ月以上早く特装版をお届けします。
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4月25日(日)
「Beat Goes On vol.11 〜 長沢哲夫新作詩集刊行記念」
【ポエトリー・リーディング、ライブ】
出演:長沢哲夫、内田ボブ
ゲスト、時間、料金、予約方法は近日発表させていただきます。

2010 年 3 月 8 日 | comment
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仙厓さんこんにちは。

急に春めいてうららかな今日この頃。生きるとはなんぞやなどと云う考えは到底浮かんでくるはずもありません。しかしながら人間いずれは死が訪れるわけですし、生きてたら生きてたで厄介なこともあまためぐってくるわけで、いつなんどき「うわーなんか苦しいよー。生きるってなんなのおお!」といった事態になるやも知れません

人間はうっかりするとそうなりがち。そこをなんとかしてやってくための伝統的な技法のひとつが仏教であり、禅なのですが、もはや生活のすぐそばにあってじぶんの心身に染みているという実感は少ない人が多いのではないでしょうか。

そうなるとわれわれにとっての禅・仏教は、言語や文化の異なる人々にとってのそれと、さほどちがいはないのかも知れません。

江戸時代の禅僧、仙厓の書画の個々に解説のつけられたこの本はアメリカで禅を広めた鈴木大拙がその晩年の仕事として英語で著し、海外で出版されたものの日本語訳版と云う逆輸入のような成り立ちをしています

書や賛の文字を読み取ることもあやしく、古文や漢文の教養もなくて意味をとることのおぼつかないわれわれには、大拙が英訳した仙厓の詩句、および解説の日本語訳というのは楽して禅画を知り、楽しむことができるたいへん魅力的なものとなっています。
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仙厓の画とことばはこれはもう、じっさい目にしていただくしかないでしょう。ヘタウマみたいですけど、この人ものすごくうまいです(あたりまえですが)。なにやら見る者のどこかにひびくものがあります。同時代の人々もやはり同じで、仙厓は画いてくれ、画いてくれ、さんざん言われたそうです。

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この動物をちょっと見てください。ちなみに左側には「きゃんきゃん」と書いてあります。解説を読むとまたおもしろいですよ。 

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仙厓の書画
鈴木大拙 月村麗子訳
初版 カバー 帯
岩波書店 平16
 

¥7,800

Tanaka

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レプリカント降臨

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ヘルムート・バーガー、ヘルムート・ラング、ヘルムート・ニュートン。ぼくも、ヘルムートなにがしと言う名前に生まれたかった。決して西洋人に生まれたかったというのではなく、ヘルムートという名前の響きが素敵だからだ。20世紀を代表するファッション写真家ヘルムート・ニュートンの写真を見た事の無い人は、少ないだろう。ニュートンの写真に限らず20世紀の広告やファッション写真は自分では気づかずに街や、雑誌の中に至る所に紛れ込んでいて知らぬ間に大衆の脳髄を勝手に刺激する。我々の頭はいわゆる国や企業の広告で作られたようなものだ。『VOGUE』などの魅力的な高級人種向けの雑誌のページをめくるだけで人々は、恍惚感に震え灰色の日常に少しの(他人がこしらえた)夢を見る。

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ヘルムート・ニュートンの写真の魅力はなんと言っても体格の良いモデル達だ。ニュートンの選ぶ女性はみんな背が高くて肩幅の広い戦闘能力の高そうな女神達だ。彼女らの大理石のような肌にコルセットやギブスを身につけたヌードの写真は攻撃的ですらあり、ヴォーグのマドンナばりに刺激的だ。まるで映画ブレード・ランナーに出てくるレプリカントなみの冷たい美を備えたスーパーモデル達がレンズの向こうで我々を見下す。そんな氷の女達を支配するニュートンは「私は魂に興味が無い」と言っていたように女の体とその肉体を際立たせるハイヒールやストッキング、宝石といった記号を散りばめてフェティシズムの極地へと連れて行ってくれる。モデルの肉体は部分へと解体され物そのものになる。
半神のようなニュートンのモデル達は、写真の中でキメラのように物と融合し新しい肉体を手に入れる。機械や物との融合の願望は、ガソリンを口に含んで唾液と混合して火をつけたり、口に含んだガソリンを精液としてバイクの燃料タンクに注ぎ込むアメリカのイカした秘教的バイクグループ、ヘルズ・エンジェルスのマシーンとの一体化を思い出す。機械との融合のビジョンは多くの人がネットという広大な世界を手に入れた21世紀の今こそ多く語られるべきだ。

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ニュートンの神々しい写真を見る時、女神への憧れにも似た感情が沸々と沸き上がってくる。女神達と出会い融合したいと。しかし現実には我々は映画や写真で我慢しなければならない。せめてひと時だけでも現実を忘れさせてくれるニュートンの作品は、一般の人々の手が届かないような遊びが体験でき、この世の春を謳歌した平家一族や世界の金融を握るロスチャイルド家のような大金持ちに生まれ無くとも、このムカツク程変わらない繰り返しの日常ですれきった我々の心を癒してくれる。
今回紹介するアントワープの演出家ヤン・ファーブルとのコラボレーションの写真集は、甲冑を身につけた生きた女神達を美しいモノクロームで捕らえた写真に出会える。必見である。

林 裕司

『Das Glas im Kopf wird vom Glas,the Dance sections』
Helmut Newton(ヘルムート・ニュートン), Jan Fabre(ヤン・ファーブル)
限定2000部
Imschoot, Uitgevers, Gent, Belgium 1990
¥12,600

2010 年 2 月 9 日 | comment
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絵はがきは流れるような波頭に乗って

アール・ヌーヴォーといえば流麗にして華麗、溢れんばかりの装飾と云うイメージで、日本では人気が高く、展覧会もしばしば行われています。しかし人気があるがゆえにミュシャとガレでおなかいっぱい。過剰な装飾は美しいけれど消化不良を招きそうで、すっきりしたものや素材を活かしたものの方がいいなあと食わず嫌い。
じっさい表面的にではなく、その本質や全貌を知ろうとしても19世紀末から20世紀初めにあふれたこの波は、ヨーロッパ全域を覆い(はてはアメリカ、日本にまで余波を)、その分野は絵画、グラフィック・デザイン、建築に家具調度、宝飾デザインと幅広く作家も関連書籍も数多…一口に飲み込むのは到底不可能。
しかしこの本なら口当たりよくいただけます。滋養もたっぷり。
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各国別に並べられた絵はがきをつぎつぎページを繰って見ていると、国や作家の個性が顕れており、これもアール・ヌーヴォー?ぐりぐりと渦巻く線がないなあ、スイスやドイツは線が固いけどがんばってる、国威発揚に農村?相性悪そうなモチーフもある、イタリアは案外ゴシック好み…などとキリなく楽しいのですが、共通の雰囲気というものもなんとはなしに分かってきます。
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たとえば民族的な衣装や神話モチーフ。画面をそのまま二次元的に捉え、その画面上で余白や過多な装飾と人物などの主題モチーフを同等に扱い、形象や色面の配置を重視した構成(発想の源泉のひとつにはジャポニスムがあるというのもよくわかります)。
絵はがきというかたちがポスターとともにこのアール・ヌーヴォーというスタイルを広く伝えることに役立ちました。アーティストたちはこれを意識的に用いたらしく、自分たちの視覚芸術運動をタブローよりずっと軽々と遠くまで届けるメディアを使う方法は、未来派やダダ、シュルレアリスムにさきがけることとなったのでした。

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『アール・ヌーヴォーの絵はがき』
ジョヴァンニ・ファネッリ エツィオ・ゴードリ
初版 カバー 同朋社出版 平5  
¥9,500

Tanaka

2010 年 1 月 30 日 | comment
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好きな人を見分けるコツ

最近、ちゃんとごはん食べていますか?
忙しくて、コンビニのお弁当やサプリメントなどでも、何かお腹に入れられればマシといった感じでしょうか?
味気ないものに慣れてしまった舌で、たまに畑から採れたてのニンジンなど食べると、びっくりするほど味が濃くて本当は独特のクセがあったりすることを思い出します。
便利だけど何でも均一化されたものに疲れてしまったら、こんな古書で鋭気を養ってみましょう!

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まずは、『THE BACHELOR’S BAR COMPANION』(独身男性のためのバーの手引書)。250種類以上のカクテルのレシピが、グラマーな女性のヌード写真と織り交ぜて紹介されており、この一冊を持っていれば、あなたもBACHELORとしての株を上げること間違いなしです。実践に使うかどうかは別としても、この本、モンティ・パイソンを思わせるようなコラージュが見出しに使われていたり、ヌード写真もエロいというよりデザイン的に洗練されていて、とてもカッコいいのです!また、オスカー・ワイルドやバイロンなどの名言がところどころに散りばめられているのも、BACHELORらしいですね。いくつになっても、恋をしていたいという素敵な男性に。
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お次は、こちらも一見オシャレな『Bridget’s Organic Cookbook』。

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しかし、オーガニックな食生活とは裏腹なこの身体。いや、だからこそオーガニックに目覚めたのでしょうか。なぜか全編ほぼヌードではありますが、色気とかそんなことは超えてしまって、すごく楽しそうに、ときに真剣に、料理をしている(コスプレ?)写真の数々を見ていると、なんだか幸せな気持ちになってきます。どのページを開いても、とにかく笑わせてくれるチャーミングなブリジットさんに釘付け!
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最後に、こんな料理本もあります。
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『EAT IT ― A COOKBOOK by Dana Crumb & Shery Cohen』
クラム元妻の手による料理本。全編に渡ってクラムのほほえましいイラストが添えられています。ただし、イラストを見るかぎり、どうも料理がおいしそうには見えないところがクラムらしいというか……。
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さて、標題の件ですが、ある人と一緒にごはんを食べて、心からおいしいと思えるかどうかで、好きになるか、なれないかがわかると私は思います。食べるという行為はエロティックですが、今回紹介した本はヌードが多いわりにエロくなくてすみません。

1.『THE BACHELOR’S BAR COMPANION』
A GUIDE FOR UNSUBTLE SEDUCERS
LEON PUBLISHING CAMPANY 1972年
¥14,700

2.『Bridget’s Organic Cookbook』
― A Barefacts Guide to Health Food
American Publishing Corporation 1973年
¥5,800

3.『EAT IT ― A COOKBOOK by Dana Crumb & Shery Cohen』
初版 SC Bellerophon Books 1972年
¥11,800

Uehara

2010 年 1 月 26 日 | comment
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引き裂かれた生物・1+1=1

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ホルマリンで保存された牛、羊、鮫など、本物の動物の死体を作品にするイギリス出身の現代アート界の寵児、ダミアン・ハーストの作品を要約すれば生と死だ。そのシンプルでショッキングな作品は人々の物議の的になる。
当時(1988)イギリスの若手アーティストは美術商などから全く相手にされて無かった。しかしビートルズやローリング・ストーンズ、セックスピストルズを生んだ国の若いアーティストは黙っていなかった。ロンドンのゴールドスミスカレッジの学生達によって港の倉庫で開催されたな歴史的な企画展「フリーズ」の主謀者の一人が当時大学2年生のダミアン・ハーストだった。

若者達はヤング・ブリティッシュ・アーティストと呼ばれ保守的な美術界を騒がした。その中で特に悪名が高かったのがダミアン・ハーストだ。動物を輪切りにしたり、腐乱した蠅の集っている牛の頭部をガラスケースに入れて展示したり、皮肉まじりに薬品瓶を綺麗に揃えて見せたりしたストレートで残酷な作品は、彼が十代にパンクに明け暮れていた事を納得させる。
ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)は当時の盛り上がりとは違って美術界の主流には成らなかったが、数多くのアーティストに影響と勇気を与えた。YBAの中心人物ダミアン・ハーストは今でも我々に話題を提供してくれる。ロンドンの高級住宅街に薬瓶を並べたインスタレーションで装飾したレストラン「ファーマシー(薬局)」を共同経営し、「本物の薬局とまぎらわしい」と薬局業界からクレームを貰ったり、近年では8601個のダイヤを全体に散りばめた髑髏(神の愛のために)が約120億円相当で売買され世界を驚かせた。

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ダミアン・ハーストの多くの作品は自分自身が絵を描くとか、パフォーマンスをするとか言ったものでは無く、技術者や彼の助手達が作ったりしている作品が多いため物議の的になる。しかし、そんなカビの生えた古くさい論議なんか100%無視して現代ではアーティストが思い描いたアイデアを金と名声を武器にして制作させても偉大な芸術作品は作れるし、物質にオリジナリティなんて無くてもいい。ダミアンの動物の死体をそのまま放置した作品は、仏教の死体が滅び行く経過を見せ、肉体の儚さを自覚させる教え「九相詩絵巻」を思い起こさせるし、タバコの吸い殻を集めた作品は、人間が無意識に抱いてる自己破壊の欲求を具体的に示す。この男の作品は死体から宝石まで極端だが、人間の業を嫌でも思い起こさせる。
ホルマリンで保存された動物の作品を初めて見たときは旧約聖書に出てくるノアの方舟の伝説を思い出した。ノアが動物のつがいを集めて保管する現代版として、ダミアンの作品が未来に役に立つのも想像出来なくは無い。
今では短髪に眼鏡のその風貌は、かつてパンクの洗礼を受けた人物と言うより知的なビジネスマンだ。当時イギリスの若手アーティストの鬼っ子は、今やアートセレブとなり週刊誌レベルの平凡な話題を振りまいたりしている。しかしアートがここまで俗っぽい情報を提供してもいいではないか。人類の欲望を結集した美しくもグロテスクなダイヤだらけの骸骨最高!

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I WANT TO SPEND THE REST OF MY LIFE EVERYWHERE, WITH EVERYONE,  ONE TO ONE, ALWAYS, FOREVER, NOW.
ダミアン・ハースト(Damien Hirst)
1998  カバー・HC・ポスター二枚付
¥25,000 

林 裕司

2010 年 1 月 14 日 | comment
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「本のない人生ほど 寂しいものはない」 -庄司淺水

こちらをお読みの皆様は本をお好きですよね?あれ? ああよかった、大丈夫ですね。
便利になったようでいて、なんだか日々忙しいですし、娯楽ならほかにいくらでもあるし、テキストだって(この文章もそうですね)画像だってPCや携帯で見られるし。気づいたら本を手にしてないなここんとこ、という方がいらしても不思議ではない、のですけれど。
でもコンビニで立ち読みする、漫画雑誌とか週刊誌も本って言ってもいいのでは?紙を束ねてあって、文字や図が印刷されてますものね。本の定義ってなんでしょう。

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さてこの本『目でみる本の歴史』は本についての本です。この本の中には本がたくさん入っています。この本の後ろ三分の一ほどは解説になっていて、素材も紙ではなく印刷されてない古代の本のことや、私たちが本、と思うかたちになるまでに開発されていった技術のことや、時代時代の本について知ることができます。
しかしここはカラーを含む、豊富な図版をみてみましょう。本の中に本たちを。
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14世紀の写本は主に事典や聖書です。木版の挿絵に手彩色されたものも出て来ます。羊皮紙に書かれたイソップ物語もあります。このころの本は万人が手に出来るものではなかったのでしょうね。金箔とエナメルの細密画で飾られている、宝飾品のようなこれも本。

16世紀の銅版の地図帳も彩色されているようです。15世紀のものとも言われるエチオピア語で書かれた聖書はほぼ正方形で、見開きの見慣れぬ文字が端整にならぶさまも、革の表紙に紐で綴じられ全体に黒ずんだその外観も、オブジェ作品かと思わされます。
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日本の本もありますね。17世紀半ば出版。見開きの片側には動物の絵が描かれています。「伊曽保物語」。行書の縦書ですし、似たタイトルの先程の本とはずいぶん様子が違います。
 「ロビンソン・クルーソー漂流記」は1719年の初版と1790年版、1857年の日本語訳版と揃っていて、挿絵も字体もそれぞれ、見比べられます。日本語版は「魯敏遜漂行紀略」と立派な字で書かれていますが、挿絵のロビンソンはなんだか弱そうです。
ウィリアム・モリスの華麗な蔓草文様と活字、バーン・ジョーンズの挿絵が手漉きの良質紙に配された、ケルムスコット・プレス刊行の「チョーサー著作集」は、本の中に入って本をめくり、他の頁を見てみたくなります。
この本に載せられている、その見た目も生まれた場所や時間もさまざまな本たちは、主に京都外国語大学附属図書館に所蔵されているものだそうです。日本にこれらの本たちが集まっているなんて、わくわくしますね。
冒頭に挙げた言葉はこの本の著者の一人によるものです。いかが思われますでしょうか?

『目でみる本の歴史』 庄司浅水・吉村善太郎 著 
初版 庄司浅水識語紙入り 函少傷み 帯欠 
出版ニュース社 1984
¥8,000

Tanaka

2010 年 1 月 7 日 | comment
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ミニマル・サイケデリック・バイブル

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その本があるだけで、うれしくなるのはなんでだろう?
Peter Maxのイラストがハッピーなオーラを出しているのは確かに大きい。
でも、それだけじゃない。
モノとしての、このサイズ。存在感。
4冊セットっていう、特別感。
並べたときの高揚感。

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ヒッピーカルチャーの神様・Peter Maxのイラストと、ヒマラヤの聖人・Swami Sivanandaの言葉が、1冊1テーマで、1ページごとに対応しています。
まさに、神と神のコラボレーション!!

料理本から思想まで、幅広く活動していたPeter Maxですが、彼の本はめったに再版されません。
「その時、その場所」にしか存在しなかったもの。それが時空を超えて「いま・ここ」にあるということが古書の味わい深いところだと思います。

こんな手の平サイズの本から、1970年のヒッピーカルチャーへ通じる扉が開かれる不思議な感覚を楽しんでみてはいかがでしょうか?

表紙を並べて飾るのはもちろん、毎日違うページを開いて、瞑想してみたり……。
ほら、なんだか良いイメージが湧いてくるでしょ?

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「LOVE, PEACE, GOD, THOUGHT」4冊セット
PETER MAX / SIVANANDA
Morrow 1970
¥33,600

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Beginner’s guide to French cooking
HC Parents’ magazine press 1969
¥14,700

Uehara

2009 年 12 月 26 日 | comment
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「BOOK246」での展開がスタート!

東京・青山の「旅」をテーマにした本とトラベルグッズの専門店「BOOK246」で、Flying Booksのセレクトした本の展開が今月からスタートしました!
今回は「Flying」と「旅」を感じる本を中心に、飛行機のビジュアルブックをはじめ、写真集・絵本・海外小説・エッセイなどをセレクトしました。
時空を超えて広がる世界を、旅の気分たっぷりの店内でお楽しみください。

書籍のレビューもご参考に!
http://www.book246.com/item_special_f.html

【BOOK246】
東京都港区南青山1-2-6 Lattice aoyama 1F
Tel/Fax 03-5771-6899
http://www.book246.com/

Uehara

2009 年 12 月 19 日 | comment
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