ブログ - Words from Flying Books
ココ・シャネルやジャクリーン・ケネディとも親しく、
その人が開くパーティには、ジャック・ニコルソンをはじめ
ハリウッド・スターが大勢集まるという、
伝説のファッション・エディター、ダイアナ・ヴリーランド。
1903年にパリで生まれ、バレエ・リュスに惹かれ、
ロンドンを経て、10歳の頃ニューヨークに移住。
1920年代のニューヨークではハーレムに入り浸って、
ジョセフィン・ベイカーが大好きでした。
ある時、セント・レジス・ホテルでシャネルのドレスを着て踊っていたところを、
「Harper’s Bazaar」の編集長カーメル・スノウに声をかけられ、
1939年から「Harper’s Bazaar」のファッション・エディターとなりました。
ダイアナは、それまで上流階級の奥様向けだったファッション誌に
革命を起しました。
オートクチュールの世界をロマンチックで幻想的に表現し、
ファッションだけでなく、アート・音楽・映画などをひっくるめて一冊にまとめ、
新しい女性の生き方を提唱したのです。
時代の先を行く雑誌を作ってきたダイアナは、
アレキサンダー・リバーマンの誘いで1962年から「VOGUE」の編集長になります。
常に独創的であり、他の人が目を向けないところに魅力を見出し、
数多くのデザイナー、写真家、モデルを世に送り出しました。
1960年代は、ビートルズが新しい時代の扉を開け、
ミニスカートが大流行し、若者が新しい生き方を求めてムーヴメントを起した革命の時代。
そんな時代の空気がいっぱい詰まった1960’s VOGUEがまとめて入荷しました。
写真は、アーヴィング・ペン、リチャード・アヴェドン、ホルスト、ウィリアム・クライン、
デイヴィッド・ベイリー、ヘルムート・ニュートン、バート・スターンなど、
とっても華やかです!
また、一部状態に難のあるものは2,500円で放出しています!
お早めにどうぞ!!
Uehara
(Sorry I wrote this in Japanese at first. will try to up in English asap. K.Yamaji)
京橋のTOKYO INSTITUTE of PHOTOGRAPHY (T.I.P)で開かれる展示会「10 x 10 American Photobooks」(http://tip.or.jp/1010americanphotobooks.html)に併せて、10冊の写真集をセレクトしました。
※期間中、以下の本はFlying Booksにて展示販売予定です。(一部非売品)
選出条件:
1. 1987 年以降に出版された写真集であること。
2. アメリカ人の写真家の写真集(アメリカ生まれ、もしくは長期においてアメリカに暮らしていること)であること。
3. 上記 2 点を満たしていれば、写真集が印刷、出版された国は問いません。
セレクトに際して:
普段から選書で意識していることは、決して「今現在」のトレンドの影響ではなく、10年後、20年後にも古書として扱いたいかどうか、ということ。いくら人気のある作品でも、時代と共に風化してしまいそうなものはここには入りません。1987年という設定は古くもあり、我々の業界ではまだまだ青みの残る果実でもあります。オリジナリティに溢れた視点や表現手法であったり、そのフォトグラファーならではの時代との接し方であったり、作品セレクトの基準は一つではありませんが、しばらく寝かした後、熟し時の味に想いを馳せ、果実を選ぶ楽しみがここにはあります。
(順番はアルファベット順)
1. Allen Ginsberg. Photographs. (Altadena, CA: Twelvetrees Press, 1990).
ビート・ジェネレーションの作家をはじめとするアウトサイダーたちの日々を捉えた作品集は、自身詩人でもあるフォトグラファーと被写体の間の信頼関係があるから可能であろう内側からのドキュメンタリー。
2. John Gossage. The Code. (East Hampton, NY: Harper’s Books, 2012).
夏の強い陽射しの下、大都会で我々日本人の忘れ物をアメリカ人写真家がレンズ越しに拾ったかのような作品集。見慣れた日常の中で見落としていた風景がそこにはある。ブックデザインや編集も本人が手掛け、企画・出版のHarper Levineと共に本企画「10 x 10 American Reading Room Specialists」にも名を連ねている。
3. Susan Lipper. Grapevine. (Manchester: Cornerhouse, 1994).
ウェスト・バージニアの田舎町グレープバインで暮らす、現代の聖なる野蛮人たちのドキュメンタリー。時間をかけて撮影された住人たちの暮らしの風景はまるで映画を観ているかのような感覚に陥る。
4. Ryan McGinley. Moonmilk. (London: Mörel Books, 2009).
もはや写真界のヒーロー的存在となっているライアン・マッギンレイ。クレジットではMorel Booksになっていますが、今回取り上げたのは、それ以前に友人や関係者のために、アーティストの手作りでごく少部数が配られたZINE。レーザープリントの粗いトーンと、幻想的な鍾乳洞窟のファンタジーのマッチングが絶妙。
5. Richard Misrach. Golden Gate: A Seventy-Fifth Anniversary Album. (New York: Aperture, 2012).
ミズラックの真骨頂とも言える定点観測ドキュメンタリー。中でも本作は、人工の造形物と自然とのコラボレーションが魅せる表情の変化が素晴らしい。
6. Richard Prince. Good Life. (East Hampton, NY: Glenn Horowitz Bookseller, 2003).
いつからか蔵書や本棚自体が「作品」と見なされるようになった。シーンの先頭を走る現代アーティストの本への愛情に満ちた作品集。手掛けたのはリチャードが絶大な信頼を置き、2012年、43歳で事故により急逝したブック・ディーラー兼出版社のジョン・マクウィニー。
7. Ken Schles. Invisible City. (Pasadena: Twelvetrees Press, 1988).
本企画に「10 x 10 American Publication Writers」として参加しているフォトグラファー・ライターの第一作品集。二十代後半に発表したニューヨークの下町の風景は、タイトル「視えない街」に相応しく、ノスタルジックで幻想的。http://www.kenschles.com/
8. Alec Soth. From Here to There: Alec Soth’s America. (Minneapolis: Walker Art Center, 2010).
ケルアックやロード・ムービー好きとしては写真の世界観はもちろん好きなのだけど、本作のセレクト理由はユーモア溢れる表紙のデザインと、何より巻末のポケットに差し込まれた小冊子「The Lonliest Man in Missouri」がツボだから。本企画「10 x 10 American Reading Room Specialists」のキューレーターでもあり、今月初来日予定。(http://goliga.com/alecsoth/)
9. Bruce Weber. Let’s Get Lost: A Film Journal, Starring Chet Baker. (New York: Little Bear Films, 1988).
もちろん、ファッション写真界で新たな領域を切り開いたブルース・ウェーバー作品の主役は無機質なまでに華やかで美しい男女であるべきで、この本は代表作と言えないかもしれない。それでも一世を風靡したジャズマンの晩年を描いたこの写真集に満ちた悲哀と愛情の眼差しはなぜか瞼に焼き付いて離れない。
10. Christopher Wool. Absent Without Leave. (Berlin: DAAD, 1993).
画家として知られるクリストファー・ウールが切り取った路上の風景、ハイコントラストなゼロックスコピーで仕上げられた、後を引く写真集。この手法による作品集は似通いがちなものが多いが、1カットごとの力強さと独自の視線で唯一無二のものに仕上がっている。
山路和広 (Kazuhiro Yamaji)
絶版写真集やヴィンテージ雑誌を取扱う東京・渋谷の古書店「Flying Books」店主。雑誌等への執筆、編集をはじめ、「代官山蔦屋書店」のディレクションなども手がけている。著書に『フライング・ブックス 本とことばと音楽の交差点』(晶文社)。www.flying-books.com
10×10 American Photobooksとは? http://tip.or.jp/1010americanphotobooks.html
アメリカの写真集にフォーカスした企画。2013年9月にT.I.Pに設けられるリーディングルームでは、10人のアメリカの写真集に関するスペシャリストがそれぞれあまりまだ知られていない若手作家の作品集(自費出版を含む)を中心に幅広く10冊の写真集を選び、合計100冊の写真集が並ぶ。オンラインでは、英語および日本語圏におけるそれぞれ10名のスペシャリストがオンライン上にて写真集を紹介。日英バイリンガル仕様のスペシャルブックも作成する。このイベントの目的は、ニューヨークの写真家たちやコレクターたちの間でしか知られていなかった/見ることが出来なかった、今最も旬の、また力のある新進作家の写真集を実際に見てもらう機会を提供する事にある。イベント終了後は、広く公共に開かれている場所で多くの方に無料で見て頂くため、セレクトされた写真集100冊を東京都写真美術館に寄付する。
今晩の原宿はFashion Night Outで大賑わい。
夏の惜しみつつ、来るべき秋・冬に身を包むお気に入りを物色する人でいっぱいです。
先日もご案内しましたが、Flying Booksも、青山のatoで催されている「BOOKS」という企画でコラボをさせてもらってます!
さっそく展開風景を撮影させてもらいました。
もちろん、主役はシャープな印象の服たち。一見オーソドックスに見えて、絶妙なカラーやソフトな手触りが着心地よさそうなレザーものや、モノトーンでもワンポイント変わった生地を使ったアウター系は魅力です。
と、同時に写真集や小説など約30点の書籍も展開中。
何よりすごいのが、デザイナーの松本与さんのアイデアがつまったスケッチブックが展示されていて、自由に見れます!!
人気フォトグラファー、ライアン・マッギンレイの写真をベースに、生地を張り合わせたコラージュなど、必見です!!
ato AOYAMA Special Event「BOOKS」
2013年9月6日(金)-10月14日(月)
場所:ato青山店
〒107-0062 港区南青山3-18-9
http://www.ato.jp/news/index.html
今週土曜日9月7日は VOGUE誌が提唱し、世界19カ国が参加する一大ファッションイベント
「FASHION NIGHT OUT」があり、Flying Booksは南青山のファッション・ブランド「ato」
とのコラボレーションをさせていただきました。
atoデザイナー、松本与氏とのミーティングなどを経て、展示販売用に30冊の本をセレクトしました。
展示販売は10月14日までやっております。是非、ご覧ください。
ato AOYAMA Special Event「BOOKS」
atoの服作りにおいて、目にしていたもの、影響を受けたものなど、
クリエイションのヒントになったアイディアやイメージを紹介する店舗イベントです。
アートブックや、文庫、コミックにいたるまで、
幅広いジャンルから本をセレクトしました。
最新のコレクションと共に並べられた本を通じて、atoの発想の原点に触れ、
お気に入りの1冊を探してみてください。
ato AOYAMA Special Event「BOOKS」
2013年9月6日(金)-10月14日(月)
場所:ato青山店
〒107-0062 港区南青山3-18-9
http://www.ato.jp/news/index.html
Cooperation with Kazuhiro Yamaji (Flying Books)
http://www.flying-books.com/
世界中の地下鉄のMAPを並べて見比べることが出来たとしたら、そのトポロジカルに圧縮されたカラフルな画像にとてもわくわくするはずだ。アルファベット、漢字、数字、線、点といったさまざまな記号に溢れる情報の羅列にゲルハルト・リヒターのカラーフィールド・ペインティングや、モンドリアンやワシリー・カンディンスキーの抽象絵画の美しさにも匹敵する感覚を味わえる。そこには表現の意識の無い機能美が支配し、イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機コンコルドのようにエレガントだ。必要最小限まで絞り込み、余分なモノを一切削り落とす時、そこには最初から、それしか考えられないフォルムが現存する。カラフルでポップな地下鉄のMAPのイメージからリアルな地下鉄のイメージに変換すると、そこには全く違った世界が見える。特にニューヨークの地下鉄は、さまざまな危険なウソかホントか分からない物語を生み出し、私達の脳髄を刺激する。たしか、「裸のランチ」の冒頭もジャンキーの主人公が警察から逃げるために地下鉄に乗り込むシーンからだったはずだ。
地下鉄といえば、ウォーカー・エヴァンスがニューヨークの地下鉄の席に座る乗客を隠し撮りした写真が有名だが、今回はブルース・デヴィッドソンのギラギラ・ギトギトした写真方を選ばしてもらう。ブルース・デヴィッドソンといえば、幾多の写真家の中でも、特に被写体に真っ正面から堂々と向き合う真摯な写真家の数少ない一人である。
ハーレムの厳しさを撮影した「East 100th Street」や、ブルックリンのストリート・ギャングをドキュメントした「Brooklyn Gang:Summer 1959」、そしてマッド・マックス化した無法地帯のニューヨークの地下鉄を体当たりで撮影した強烈な写真集「Subway」は特に魅力だ。
「Subway」はその厚化粧のようなカラー写真の迫力が胸騒ぎや苛立ちを感じさせる。なんというか、見ている者に安物の香水の臭いを想起させたり、背中にナイフを突き付けられてカツアゲされているような恐怖感を視覚を通して訴えかけてくる。ブルース・デヴィッドソンがインタビューで「これはモノクロでは無く、カラーの猥雑な感じが必要だと」語っていたことが、改めて見るとやはり納得である。車内一面の落書きと、そこに座る黒人女性のポートレイトは、電車が出す騒音や低下層に生きる人々の心の苛立ちを良く具現化しているし、仲間とツルんでスカッとするために喧嘩するしか考えてないような、顔に傷のある若者達の現状がそのまんまストレートに表現されている。この魅力的だが危険一杯の空間を覗いてみたいけど、勇気のの無い方は是非、この写真集でその感覚を創造し満足してもらいたい。
ブルース・デヴィッドソンの「Subway」を眺めていると、一つの映画を思い出す。それは巨匠ブライアン・デ・パルマ監督の「殺しのドレス」である。この映画で、主人公がをブロンドのデカイ剃刀を持った女装した犯人に主人公が追いかけられる地下鉄のシーンは、80年代前半のニューヨークの地下鉄の雰囲気、いや、アメリカの雰囲気を共有している。その不安に満ちたフィルムは、天下のアメリカが下から上へと追いかけてくる日本やアジアの国々に対する恐怖であり、帝国の綻びの始まりである。しかし、この時代のフィルムに焼き付けられた不安や恐怖、その不安から出てくる”マッチョ・アメリカ”の強がりの態度は妖しく輝き、今でも僕らを魅了する。写真であれ映画であれ、恐怖や不安は人々にいち早く感染する。
ハヤシユウジ
『Subway』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
初版 HC カバー
Aperture 1986
¥25,000
『Photographs』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
献呈サイン入 HC カバーヤケ
Agrinde 1978
¥48,000
『Photographs』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
サイン入 SC セロテープ跡 裏表紙少イタミ
Agrinde 1978
¥23,000
『East 100th Street』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
SC 少イタミ 小口ヤケ
Harvard University Press 1970
¥25,000
『Portraits』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
初版 HC カバー
Aperture 1999
¥6,000
宇野亜喜良・横尾忠則によるイラストが美しい『海の小娘』は、
登場人物の語りを赤・青の色分けによって多重的に展開する物語。
この本を見るとき、イラストに眼を奪われがちですが、
「えほんてきに」とタイトルに書いてあるように、これは単なる「絵本」ではないのです。
ある国の港のお祭りの日、
主人公は、白く美しいヨットに乗った少女(ちょっと不機嫌)に出会い、
不思議な事件に巻き込まれます。
海のように深い眼をした少女に導かれ、
ヨットに乗り込むと、そこでは現実とは別の時間が流れていました。
中盤、船長に誘われ酒場で話をしていた時間と、少女と一緒にヨットにいた時間とが同時に展開していく場面が秀逸です。(赤・青セロファンを使って読み進めます)
そのとき何が起こっていたのか、本当のことは誰にもわかりません。
しかし、自分の身に起こったことは事実です。
独白を重ねて物語りを進めていく手法では、芥川龍之介の『藪の中』を思い出します。
これを原作に黒澤明が映画化しましたが、小説でも映画でも、
同じ場面を別の角度から描くためには、一つの時間軸の流れに沿って
別の視点からもう一度くり返すという手法をとらざるを得ません。
『海の小娘』は、赤と青の色分けで紙面をデザインすることによって
同時平行で物語を進めることができました。
赤と青の世界だけではありません。
「僕」がヨットで経験したことと、船長の遠い記憶がつながるのです。
少女はヨットに棲む亡霊か、はたまた海の化身なのでしょうか。
お祭りの日だからか、少女を媒介に彼岸と此岸がつながるのです。
彼女がちょっと不機嫌なのは、見えないものを見ないようになってしまった人たちに対してなのかもしれません。
物語とデザインが補い合って、一つの像を立体的に立ち上らせ、映像的でありながら映像では表現できない作品、これぞ本の美しさだと思います。
『海の小娘』
文:梶祐輔
イラストレーション:宇野亜喜良 横尾忠則
初版 カバー少イタミ 赤青セロファン付
朝日出版 1962年
¥65,000
Uehara
今日から東急東横店で「渋谷大古本市」が始まりました。
今年で22回目を迎える渋谷大古本市、東急東横店のリニューアルに伴い会場が少しコンパクトになりましたが、20店舗が一堂に会し、密度が濃くなっています。
弊店では、駒井哲郎、小村雪岱、恩地孝四郎など美術を主として、映画や写真、思想や戦記なども出品、毎日続々新しい商品も追加していきます。
暑い中ではありますが、今日も大勢のお客様でにぎわっておりました。
とっておきの1冊を探しに、ぜひ足をお運びください!
渋谷大古本市
8/15(木)~20(火)
10:00~21:00(最終日は17時閉場)
東急東横店 西館8階 催物場
http://www.tokyu-dept.co.jp/toyoko/event/detail.html/?id=226
(Bauhaus Manifest)
美術館などでこの絵を見たことがあるという人は多いでしょう。
グロピウスによる「バウハウス宣言」を掲載したパンフレットです。
この口絵の木版画を作ったLyonel Feiningerという人は、ヨーロッパではカンディンスキーと並んで抽象画の作家として知られていますが、日本ではまだそれほど知られていないようです。
Lyonel Feiningerは、1871年ニューヨークに生まれ、ドイツで音楽と絵画を学び、
第一次世界大戦前はイラストレーターとして新聞にカリカチュアを描いていましたが、
この頃盛んだったムーヴメントや学派には特に属さず、カンディンスキー、クレーたちと活動した後、1919年にグロピウスの誘いで、バウハウスで教鞭をとりました。
ファイニンガーは、ドローイング、ペインティング、彫刻、版画など様々な手法を用いて作品を創りました。
1965年に出版された『City at the Edge of the World』は、ファイニンガーの息子ふたりが彼の作品を紹介したものです。
船乗り・パイプをくわえた人、帽子をかぶった鳥やおじいさんなど、素朴な木の質感が残る彫刻は、みんな愛らしく表情豊かで、家や舟が並ぶ海のそばの小さな町で本当に生活しているかのように見えてきます。
一見子ども向けのおもちゃのように見えるかもしれませんが、
遊びとアートとは元は根がひとつなのだと思います。
この人形たちを見ていると、自然と会話が聞こえてきそうです。
同じ人形が別の角度でも写されているのですが、見る位置によって印象が変わります。
顔や背中にはなんとも言えない哀しみや喜びが内包されていて、
いびつだけれど、大きな愛に包まれて生きているという感じがします。
自分もその町の住人になった気分で、いつまでも眺めていたくなる作品集です。
『City at the Edge of the World』
Lyonel Feininger
HC 函ヤケ
Frederick A.Praeger 1965年
¥5,000
Uehara
『Fountain Pens of The World』は、万年筆界の権威・Andreas Lambrou氏が集めた世界各国の万年筆(ヴィンテージからモダンまで)の、その歴史とブランドを豊富な写真と資料で紹介した非常に重厚な本です。
170ページ以上のフルサイズの写真ページには、約2000本の万年筆がカラーで実物大で見られます。
また、万年筆のメカニズムとデザインの発達を精緻な挿絵で紹介。
日本製の万年筆の広告。蒔絵がほどこされています。
今では世界的な権威であるAndreas Lambrou氏は、12歳の頃から万年筆を集め始め、「Pen World」や「Vogue」などのライターを経て、「Classic Pens Ltd.」という会社を設立。万年筆の修理と販売をおこなっているそうです。
私がお気に入りの1本を求めたのは16歳の頃、たしかOliveで見たフランスの万年筆(Recife)が素敵だと思って、渋谷のBleu Bleuetに買いに行ったのを覚えています。赤いマーブル模様の軸で、専用のアルミの筒に入っていました。「Recife」と走り書きした文字もカッコよく、持っているだけで大人になった気分。大事にしているうちにインクが固まってあまり使えなかったという苦い思い出があります。
ふだんはゲルインクのペンが使いやすいのですが、カバンにお気に入りの1本がいつも入っていて、ここぞというときにサッと出せるといいですよね。
万年筆で書かれた字を見ると、なんだかその人らしさが感じられて好きです。
字が上手でなくても、その人の字として愛着がわきます。
万年筆を手に持ったときの重さ、インクの色あい、軸の材質など、アナログな感じが古本にも似ていると思います。
質・量ともにこれほどの写真と資料が豊富な万年筆の本は類を見ないでしょう。
リファレンスとして万年筆コレクター必携の書です。
『Fountain Pens of The World』
Andreas Lambrou
HC Philip Wilson Publishers 1998年
14,500
Uehara
Elvis Pressから今夏出版されたfancomi初の作品集を入荷しました。
イラストレーター/デザイナーとして、雑誌、広告等で活躍中のfancomiによる「本」をテーマにした作品集です。
「本」の体裁をとっていますが、文章は書かれていません。
人物の顔はのっぺらぼうです。
はっきりとした線でありながら、描かれているのは「何か」。
その「何か」をとらえようとすると、するりと腕から抜けていってしまうような不思議な感覚に陥ります。
描かれた「何か」をどのように解釈するかはあなた次第。
そんな余白があります。
きっとこの本は、見る人の数だけ物語があり、見るたびに違う物語が生まれるのでしょう。
『BOKU no HON – WHO DID WHAT WHEN AND WHERE? BUT IT IS ONLY AN OPPORTUNITY. –』
fancomi
初版 Elvis Press 2013
¥1,260
『BOKU no HON 』の出版を記念して、原画展が開催されます。
こちらもあわせてご覧ください。
fancomi「BOKU no HON EXHIBITION 1」
at circle gallery & books
8月2日(金)― 8月12日(月)※(6日・7日・8日は定休日)
12時―19時
■金箔寺ワークショップin “BOKU no HON EXHIBITION”
8月10日(土)14時―18時
circle gallery & books
OPEN 12:00 – 19:00 [ 定休日 火曜・水曜・木曜 ]
〒186-0011 東京都国立市谷保5119 やぼろじ内
TEL / FAX 042-505-8019
www.circle-d.me
fancomi / 大森 純
プロフィール
1980年埼玉生まれ。
2004年A&A青葉益輝広告制作室入社。
2009年よりフリーランスのイラストレーター/デザイナーとして活動開始。
2010年第3回グラフィック「1_WALL」ファイナリスト。
その他多くの個展、グループ展で精力的に活動。
企業ロゴ、広告、書籍、雑誌、CD、グッズ展開、などジャンルに捕われず幅広く活動中。
http://fancomi.com
Uehara