100年の節目にやりたいこと。
ドイツの広告界の伝説と言われるOtto Elsnerが1871年に設立した印刷会社「Elsnerdruck」の100周年を記念して作られた作品集です。
背はアクリルでビス留め、表紙はビニールカバーに印刷されています。
表紙からしてインパクト大なのですが、さまざまな印刷表現を見せるため、イラスト・写真・コラージュなど見開きで27枚に加え、仕掛けを組み込んだページが2点あり、
サイケデリックなレインボーカラーのイメージと、ナチス時代のプロパガンダを彷彿させるコラージュが入り混じっています。
写真に撮って気づきましたが、ひげもじゃの人の顔になっていますね。
じつはこれ、グレーの棒のようなものは、活版の活字が1本1本積み重なってできているのです。
木箱は厳重に閉じられ、そばに爆弾(?)まで備えて、ものものしい雰囲気の銃を持った警官たちに見つめられながら、観音開きのページを開いてみます。
この印刷会社の社長さんでしょうか?
なにか誇らしげでもあり、立派な会社であるような気持ちになって左右の観衆とともに見つめます。このおじさんの首のあたりを今度は上下2つにページが分かれていて、
それを開くと……
キュートな女性が出てきました。
上下左右にたくさんの観衆とともに、さらに左右にページを開くと……
また上下に開くと……
ヌードの女性が1人、2人、3人…と思いきや、片方メガネのおじさんにも見えるだまし絵。
警官→おじさん→かわいい女性→かわいい女性→おじさん/女性……。
このくり返しは一体何なんでしょう。
だんだんと何かに誘導されているような……。
さっきまで一緒に眺めていたはずの観衆は、ページを重ねるごとにおびただしい数のひとだかりになっており、今度はこちらが見つめられているような思いにさせられて、最後のページを開くと……
なんて厳重な!!
まったく手の込んだ造りになっています。
元から見直してみると、最初のものものしい雰囲気(爆弾まで置いて…)と、この何枚もめくる造りをひっくるめて仕掛けだったことに気づきます。
しかし、こんな立体的な演出を1ページに収めていることがすごい!
そして、次のページをめくると、POP-UPの仕掛けが!
歴史ある会社の100周年の、バカバカしいほどにカッコいい宣伝物。
復刊されることはまずないでしょう。
『Hundertfach: Bericht Einer Betrachtung.』
AD:Bodo Koechel
Elsnerdruck 1971年
65,000円
Uehara