“紙たちの博物館” ゴメス氏のおくりもの
なにかを集めたことはありますか?
稀覯本やめずらしい切手でなくても、小石や貝殻、壜のふた、シールなどの小さなものをついつい集めてしまったことは?
スペインの14歳、ホアキン・ゴメス君は、飛行船やはにかむ少女、エキゾチックな風景の魅惑的なポストカード、ラベル、ポスターを集め始めました。1916年の事です。
どんな図柄だったのかは分かりません、しかし最初のある一枚が彼を10数万枚もの紙たちとの出会いへと連れ出したのです。
長じてホアン・ミロらと芸術運動を興し、写真家ともなったゴメス少年、いえゴメス氏のヨーロッパ最大といわれるコレクションから、テーマ毎に一冊ずつまとめた、この『100年前のヨーロッパ』シリーズは日本オリジナルで1985年に出版されました。
19世紀末から20世紀はじめのベル・エポックの時代。写真、映画、航空、鉄道、印刷、あらゆる分野において新技術がつぎつぎ実用化され、文化華やかなりしこの頃数多く作られては消えて行った紙モノたち。
写真に淡く彩色された、夢見るような美女たちのポストカード。
憧れの乗り物、自動車や飛行機、気球に飛行船はユーモラスなコラージュやイラストでも描かれています。
コマーシャルアートの先駆けでもあるハバナ煙草のパッケージ。
そして「クロモス」。
この時代と共にブームを起こした後、瞬く間に消え去ってしまったという愛らしい、趣味の印刷物。多色刷石版で花飾りや天使を象り、型抜きされてレリーフのようなふくらみをもった、掌にのるほどのクロモスは、実用性より集める事を目的とされていました。
収録されたこれら一枚一枚は、見る人を多面体の結晶のような光を放つベル・エポックの一端に触れさせ、ささやかなものを集めることの魅力へと誘うのです。
ゴメス・コレクション 100年前のヨーロッパ
第1巻 1900年の女神たち
第2巻 クロモスの世界
第3巻 機会と科学の夢
第4巻 ハバナ・エキゾチカ
1985,86年 小学館刊 各ビ二ールカバー付 4冊セット 8,000円(ご注文は店頭かメールにて)
Tanaka