ふたりのベロニカ、3つのカフェ・ソサイエティ
深夜のパリでピカソやヘミングウェイらと夜な夜な繰り広げられる饗宴の日々。多くのアートファン、海外文学ファンにとって、ウディ・アレン監督の「ミッドナイト・イン・パリ」はたまらないファンタジー作品だった。
そのハリウッド版ノスタルジック・ファンタジーとも言える新作「カフェ・ソサイエティ」が日本でもこのゴールデンウィークに公開となった。主人公とふたりの美女、ベロニカのシニカルで切ない恋愛模様など、ウディ・アレン節は相変わらず健在、大ヒットした「ララランド」にも通じる世界観はより多くの人に楽しめる作品となっている。(個人的には映画『オン・ザ・ロード』のヒロイン、クリスティン・スチュワートが主演なのもツボだった。)
今回ご紹介するのは、アメリカのゴシップライター、エルザ・マクスウェルが描くハリウッドの虚構の光と影。まさに映画の世界観を地でいく雑誌『Elsa Maxwell’s Cafe Society No.1』1953年刊。ざらついた紙質の誌面は100ページにも渡り、ハリウッドやニューヨークのセレブリティたちのプライベートに切り込んだゴシップから、イギリスのロイヤルファミリーまで幅広く人々の好奇心を煽った内容となっている。
そして、約20年後、今度は違った意味で熱を帯びるサンフランシスコのノース・ビーチを中心とした詩人たちの『Cafe Society - photographs and poetry from San Francisco’s North Beach』Ira Nowinski 写真 1978年刊。表紙は現存するカフェ・トリエステで1977年に催された、シティライツ書店のマネージャーだった日系人Shis Muraoさんのウェディング・パーティの風景。ハリウッドのような絢爛さはないが、写真から伝わってくる60′Sの空気そのままボヘミアンな空気感とアレン・ギンズバーグら作家たちのエネルギーは同等以上に力強い。
90年代半ばのトーキョー・カフェ・ソサイエティの一翼を担った広尾のカフェ・デ・プレもつい先日4月24日に復活オープンを果たした。かつてのトーキョー・ナイトライフの熱気を想い返しつつ、テラスのもっとも心地よい季節をエンジョイしたい。
K.Yamaji