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ブログ - Words from Flying Books

ブキミ大好き

ジョン・ウォーターズ監督の著書『悪趣味映画作法』は、キワモノ好きの人なら必ず読むべき本だ。ゲロの王子と呼ばれるウォーターズの、トラッシュな映画への愛情と情熱が、涙(笑いの)なくしては読めないシロモノにしている。ウォーターズのキワモノぶりは、「ピンクフラミンゴ」の犬の糞を食う映画史上もっともラディカルなシーンや、変態ばかり出てくるキャスティングで証明済みだし、彼の他の作品どれを選んでも、彼がバッドテイストを心から愛しているのが分る。

キワモノの写真家と言えば、ジョエル・ピーター・ウィトキンをすぐに思い出すが、ウィトキンの写真は、彼のクールな外科医のような視線が、死体やフリークス達のテンションを下げ、秩序のある世界を構築しているので、異様なものを撮っていながら、そこまでブキミには感じない。

ブキミな写真を撮る第一人者といえば、ダイアン・アーバス、そして倉田精二だ。この二人がすごいのは、何気ない生活の写真でも異様に見せてしまうということだ。ダイアン・アーバスとは面識はないが(あたりまえ)、倉田精二とは、面識がある。昔、アルバイトしていたカフェで倉田さんと数回お話させていただいたことがある。彼の写真しか知らなかった僕は、恐る恐る話しかけたのを今でも覚えている。『FLASH UP』の表紙の写真を撮った男だけに、さぞかしVシネマ的な人かと思っていたら、全く正反対で凄くチャーミングな人物だった。しかし、そこは倉田精二、まるでドストエフスキーの小説に出て来そうな人物を地でいきそうなオーラや言動を感じさせ、サイコーだった。

アーバスと倉田精二を、外界に目を向けた開かれた世界への異様な思い込みだとすれば、それとは正反対の、閉ざされた密室で繰り広げられる悩ましいほどの自己破壊、自己再生をしているアーティストがいる。ギリシャ生まれのアメリカのアーティスト、ルーカス・サマラスによる世にも奇妙なセルフポートレートがそれである。

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サマラスのセルフポートレートの異様なテンションの高さや、何かをキメテるとしか思えないブキミな笑顔は、シンディー・シャーマンや森村泰昌のブキミさとはステージが異なっている。彼等(彼女)の作品は、知性に裏付けされた作品だけに、論理的な解答を導き出すのは、さほど困難ではないだろう。しかし、サマラスや、デヴィット・リンチ、吉田戦車などの作品を目の前にしては、僕たちは途方にくれてしまう。彼等の作品は、精神分析家にまかせて、僕らはその分らない何かを楽しむしかない。

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サマラスの作品に共通するマーブルな溶解のイメージは、昼の世界の秩序を崩壊させ、足下にある大地をぐらつかせる。夜、一人で部屋で何かに熱中している時、チーズが混ざり合うように僕たちは、何モノにでも同一化し快感を貪る。モウリヤックがいみじくも言ったように「一人でいるとき人間はみな狂人」を地でいくサマラスの行為は、誰もが一人でいるときに他人に見せられない何かを、少しだけ扉を開けて披露してくれる。この光景は世の親達が子供には絶対に見せたく無い光だ。

しかし、バッドテイストを一度味わえば何度でも試したくなる。ジャンクフードがやめられないのと同じだ。世の清潔すぎる作品、「パッチ・アダムス」や「サザエさん」なんかクソくらだ。そう、今こそ言える、「I fucking hate Forrest Gump」(失礼!)

samaras-album
『SAMARAS ALBUM』 Lucas Samaras
初版 Whitnet/Pace 1971
¥24,800

 
kurata-seiji
『80’s FAMILY』 倉田精二
初版 帯少イタミ JICC出版局 1991
¥63,000

 

arbus
『MAGAZINE WORK』 Diane Arbus
HC カバー Aperture 1984
¥14,700

 

林 裕司

2011 年 2 月 12 日 | comment
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