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ブログ - Words from Flying Books

サラリーマンのマンネリが嫌になり。

この間、古本の即売会で棚を眺めていたときのこと。「ん、いい背だなぁ」と思って手に取ってみたら、装幀は山名文夫だった。ときどきこういう一人クイズをやっています。ちなみに、その本は残念ながら表紙に大きく蔵印が押されていたために買わずに帰ってきてしまったのです。

そんな折、山名文夫の作品集が入ってきました。
名前を知らなくても、紀ノ国屋(スーパー)のロゴや、新潮文庫の葡萄のマークなど、誰でも目にしたことがあるでしょう。

まだ日本に「デザイナー」という言葉が生まれるずっと前、明治後期に杉浦非水・橋口五葉などがまいた種が、大正〜戦後にかけて花開く、まさにデザイン史のなかの激動の時代を生きた人です。

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 山名文夫といえば、資生堂の広告デザインで、美しく上品な女性のイラストや、唐草文様のイメージが印象的かと思います。当時の資生堂社長であり意匠部創設者の福原信三が原案を作った「花椿」のマーク。そしてロゴタイプや唐草文様は、長年かけて先輩デザイナーたちが形づくってきたものを山名文夫が継承し、さらに認知度を広げて発展させていったようです。

軸のぶれないイメージを作る人なので、ずっと資生堂一本でやってきたのかと思いきや、入社して3、4年で独立し、名取洋之助主宰の対外グラフ誌『NIPPON』の編集に河野鷹思とともにたずさわります。その後、社長の求めに応じて資生堂に復帰。名取洋之助のもとで得たデザイン力をもって、より資生堂のデザインを豊かにしていくのです。山名文夫を語るとき、資生堂とは切っても切れない関係ですが、福原信三との強い信頼関係があったからこそ、企業理念をどのように表現していくか常に問い続けて、資生堂のブランドイメージが作り上げてこられたのでしょう。優美なデザインの裏側には、デザイナーとしての厳しい姿勢が感じられます。

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生誕100年を記念して編纂されたこの作品集では、山名文夫の60年に及ぶ創作活動から紡ぎ出された膨大な作品群より、イラストレーション・ロゴタイプ・装幀など193点が収録されています。早川良雄、永井一正、中村誠などからの寄稿も、いろいろな角度から山名文夫という人を感じることができて興味深いです。

  

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 『山名文夫 生誕記念作品集』
初版 帯 求龍堂 1998年
¥8,400

Uehara

2009 年 12 月 1 日 | comment
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