90年代後半、彗星のように現れて日本の写真界の常識を一気に軌道修正させたのは、現役女子高生の女の子。コンパクトカメラで女子の気持ちいっぱいに撮影された写真は、シリアスな暗い男の目線で構築されていた世界とはまるっきり違っていた。
一躍ハイティーンのカリスマに上り詰めたのがHIROMIXである。まるで少女がカメラを持って世界を相手に面白可笑しく飛び回っているようだ。キラキラしていて底抜けに明るく、時には悲しみもある写真は刹那的であるがゆえに美しい。
透明でカラフルなあっけらかんとした写真は、それまでの日本の写真界の歩んできた歴史なんて眼中に無いとばかりにガーリーフォトブームを巻き起こした。
コンパクトカメラの押せば誰でも写せるという最大の利点を生かして、才能とセンスと勇気があれば誰だってスターになれるということを実証した。同時期に蜷川実花や長嶋友里枝などと共に男性的な写真界に少女達が降臨したのである。
HIROMIXの写真はストレートで妖しく、危険な明るさに満ちている。写真が上手いとか、カッコイイとかよりも先にこういう友人関係や生活を素直に撮ればそれでいいんだと言わんばかりである。
誰もが写真機という民主的な機械を使って好きなものをフィルムに定着できるようになってから、他人には全く関係ない個人の恋愛遊戯や結婚、興味の無い人にはまったく価値の無いオルタナティブな活動が作品になって受け入れるくらいまで世界は幅が広くなった。
戦争や事件など撮らなくても個人のプライベートが作品になる時代だ。観念論でも唯物論でも、資本主義でも共産主義でもどっちでもいい、存在が在ろうが想おうが、そんな事は関係ない。そこに在る物を(想う物)感じたままに撮ればいいんだ。
今、自分の横にいる人が美しいと思った瞬間、世界は違った装いを見せる。その事を強く意識し躊躇せずシャッターを切る。現代美術家のゲルハルト・リヒターが「素人写真の中にはセザンヌの絵よりも美しい物がある」と言ったのもあながち嘘ではない。それらは歴史に登場しないだけだ。
ニエプスが初めて写真を撮ってからそんなに時間は経っていない。まだまだ写真は人々の認識を変え続ける。
HIROMIX
EDITED BY PATRICK REMY (独)ITED BY PATRICK REMY
¥8,400
林 裕司
内藤正敏の写真は怖い。普通にただ一目見ただけで怖い。ミイラ(出羽湯殿山の即身仏)や暗がりに浮かぶ、拙いタッチもうすら寒くさせる遺影の並ぶさま。闇から顕れるこの世ならぬ気配をまとった神仏像。楽しそうではあるが年輪が迫力となって見るものを脅かす、婆(ばば)たちの顔、顔。
山中の聖地や、伝統の儀式が未だ生活の一部として息づく集落に於いてのみ、その怖いモノは見出されるわけではない。
『内藤正敏写真集 東京―都市の闇を幻視する』の舞台は浅草、上野、銀座、新宿などの盛り場だ。鼻に蛇を通す見世物芸人や傷痍軍人、何があったか顔面からだらだら血を流す男。怖い。しかし建物が取り払われ、土が剥き出しになった工事現場や路上で眠る人の傍を行くカップル、選挙カーなど普段目にすることがないわけではないものにも怖さが感じられるのはどうしてなのだろう。浮浪者の人々の表情が山中の神仏像のようであるのは。
山奥にも怨念の歴史の地にも力の籠められた寺社にも都会にも、内藤正敏が視るのはいつも異界だ。この写真集の作品が撮影された1970年から1985年の間、そしてそれ以降も東京はこれまでと同様、常に激しい変化を続けている。その変化の中にあって変わらぬもの、闇のありかを視る。
そして自らの写真に触発されて、写真家はこの闇を抱えた都市の時を超え、江戸の呪術的な成り立ちをまでを視通し、カメラには写らないこの幻視は文章となる。
内藤正敏写真集 東京―都市の闇を幻視する
初版 帯 1985 名著出版
¥28,000
Tanaka
この秋、渋谷の街がアートで彩られる「渋谷芸術祭」が開催されます。その関連イベントとして、弊店のWall Galleryで写真を展示することになりました。
HIV,AIDS等様々な問題を抱えるアフリカ大陸の子供たちの救済及び自立支援を目的としたプロジェクト「African Jag Project」が、現地での支援活動を通して撮影してきた写真を展示します。
「アフリカの子供たちの支援」というと、日本では、宣伝によるイメージが先行してしまって、現実が見えにくくなってしまっているように思います。「African Jag Project」が現地で捉えた子供たちのまなざしは、一対一で迫ってくるものがあります。写真ではとびきりの笑顔の子供たち。しかし、写真に添えられた文章と合わせて見ると、どんな状況で暮らしているのか、実感を持って伝わってきます。支援を通して人々の間に入っていくから、その情況が掬い取れるのでしょう。
「渋谷芸術祭」では他にも多彩なイベントが行われますので、ぜひお立ち寄りください。
<African Jag Project 写真展>
期間:11月11日(水)〜23日(月・祝)
場所:渋谷 Flying Books
〒150-0043東京都渋谷区道玄坂1-6-3 渋谷古書センター2F
時間:12:00〜20:00 (日曜定休)
-African Jag Project-
世界中のストリートが手を繋いだら、それは大きな力に変わっていく
『African JAG Project』は、表現を通じてアフリカ大陸における様々な問題を提起すると共に貧困層の子供たちの救済及び自立支援を主目的としたプロジェクトです。このProjectの大きな特徴は、今現在、アフリカ大陸で起こっている悲惨な現実に目を向けてもらうために国境やジャンルを越えて、多くの表現者が現地と一般の人達のパイプになり、伝え、作品を作り、その収益の一部を現地支援に充てていることです。
Official HP:http://www.africanjag.org
-渋谷芸術祭-
「若者とアート」をテーマに、地元一流アーティストや渋谷駅周辺の学校をはじめ、商店会、NPO、企業が協働し、街を開放して渋谷の新しい文化を表現するアートフェスティバルです。Flying BooksでのAfrican Jag Projectの写真展の様子が渋谷芸術祭撮りおろし作品「Road Side」にて紹介されております。
上映に関する詳細はオフィシャルサイト
Official HP:http://shibugei.jp/をご覧ください。